ねこ
気ままな猫の暮らしにあこがれる。ただし
餌の心配をしなくて済む場合に限る。
自分で狩りをしないといけないとなると自
信がない。うまく狩りができる前に、飢え死
にしそうな気がする。
さくらネコみたいにみんなにかわいがられ
る猫がいい。
あの子らは毎日どんな生活を送っているの
だろうか。天気のいい暖かい日は日当たりの
いい場所で、毛づくろいしてたりするけど、
見かけないときはどこにいるのだろう。
そういえば、最近はやりのシンクロARデ
バイスは、猫と人間でもつかえるのだろうか。
そのデバイスを使って、同期設定すれば、
相手の見えている状態を、自分が見ているか
のように見えるらしい。見たい方向を向けば
相手のデバイスのジャイロが起動して、見た
い方向に相手の顔を向けられるそうだ。開発
メーカーはそのデバイスの普及することを望
み、特許申請せず技術を公開してアプリで儲
けようとしているらしい。それで、各メーカ
ーが廉価版を出している。廉価版を買って、
猫につけてみようか。
それにしても、どうやって猫につけよう。
警戒心が強いから簡単にはつけさせてくれそ
うにない。まずは相手の警戒心を解くことか
ら始めよう。うまい手がある。彼らの大好物
のおやつ作戦だ。あのおやつはすごい。どん
な猫も、
「にゃ~」
と甘えた声を出して寄ってくる。
とりあえずは、頭をなでさせてくれるよう
になってけど、このデバイス、猫の頭にはか
なり大きい。ベルト部分で調整できるとして
も対象が人間のサイズを想定しているから、
限界がある。そういえば、猫の撮影用の被り
物が有ったはず。それを細工しよう。
なんとか、猫に被せられそうだ。
いつものように、猫のおやつでお誘いして、
優しく頭をなでながら、
「さあ、被り物で写真撮ろうね~。」
となだめながら、自作被り物デバイスを猫に
近づける。抵抗されるかと思いきや、この子
ら狭いところが好きらしい。自分から頭を突
っ込んできた。結構気に入ってるみたい。撮
影用の被り物だけあって、なんかかわいい。
可愛さに見入ってる場合ではない。早速同期
設定してみよう。
「お~」
猫目線だ。なんか普通にデバイスつけてる自
分ってなんか間が抜けている。周りはどんな
感じなんだろう。ちょうど桜がきれいなはず。
猫目線の桜ってどう見えてるんだろう。
普通に桜だ。
自分は今どんな感じなんだろう。反対向い
てる。そうだよな。向かい合ってるから、そ
うなるか。反対側からいつものお世話してい
る人の影が見える。
「あれ、また桜が見える。」
と言ったつもりが、聞こえてくる声は
「にゃ~」
と甘えた声しか聞こえない。